2019.11.29

調剤棚の工夫をして安全性向上を。調剤薬局の収納・整理整頓術

調剤薬局で働いている方にとって、調剤棚や調剤室の整理整頓はとても大切なことです。しかし、風邪やインフルエンザなどが流行る冬の時期は調剤薬局も忙しくなるため、つい納品された医薬品を棚に入れるのを後回しにしてしまったり、医薬品の配置が雑多になってしまったりすることもあります。

そこで今回は、調剤薬局での整理整頓に役立つ収納術をご紹介します。調剤棚や調剤室の収納にお悩みの薬剤師や調剤補助員の方はぜひ参考にしてください。

調剤室の整理整頓・清潔が保たれていないことによるデメリット

感染症が流行する冬の時期は特に調剤薬局が忙しくなりますが、調剤薬局の繁忙期以外でも人手が不足している調剤薬局の場合は、整理整頓できていない状態が慢性化していることもあるでしょう。ジェネリック医薬品の入荷が増え、既存の調剤棚に入りきらなくなってしまっている場合もあるかもしれませんね。

冒頭で「調剤棚や調剤室の整理整頓は大切なこと」とお伝えしましたが、なぜ整理整頓をすることが大切なのでしょうか。ここで改めて、調剤室の整理整頓や清潔保持ができていないことによるデメリットを整理してみましょう。

調剤ミス(調剤過誤)につながる

医薬品は毎日のように入荷されてきます。しかし、調剤や患者さまの対応などで忙しく、取り急ぎ検収処理だけを済ませてそのまま放置してしまうこともあるでしょう。後で棚に入れようと考えていても、営業時間が終了する頃には書類なども散乱し、大変な状態になっていることもままあります。

箱や医薬品、書類などで散らかっているカウンターの上では、調剤ミスが発生しやすくなります。調剤ミスなどの調剤過誤は患者さまに健康被害を及ぼす場合もあるため、特に注意が必要です。

調剤に時間がかかる

調剤棚が整理されていないと、目的の医薬品を探すのに手間取ることがあります。複数の医薬品を取り揃える際は、特に調製に時間がかかってしまいます。

適切な在庫管理ができない

検収済みの医薬品の棚入れを忘れ、他の場所に放置しておくと、在庫管理に支障が出ます。あるはずの医薬品が見つからず調剤ができなくなるほか、使用期限切れを起こして廃棄せざるを得なかったり、在庫があるのにないと判断して在庫を過剰に抱えてしまったりといったリスクが考えられます。

調剤ミスを防ぐための調剤棚の工夫

調剤室の整理整頓ができていないことによるデメリットの中でも、特に注意したいのが調剤ミスです。ここでは、調剤棚への一工夫でできる調剤ミス対策をご紹介します。

注意喚起ラベルの貼付

調剤ミスの中でも特に多いのが、同じ種類の医薬品の規格違いのものの取り違えです。ジェネリック医薬品の推進に伴って、特に取り間違いが増えています。
このような調製時の取り違えを防ぐためには、間違えやすい医薬品の棚に注意喚起ラベルを貼るのが効果的です。大きいラベルを貼り調製時に手が触れるようにすると、さらに作業者の注意を促すことができます。
また、医薬品の配置を決める際に、規格違いのものを離れた棚に配置する、規格の小さい順に並べるといった工夫をするのも一つの手です。

医薬品名のラベルの工夫

名前の似た医薬品については、棚に貼り付ける医薬品名ラベルをユニークなものにすると判別がしやすくなります。
例えば、包装容器から医薬品名部分を切り取ったものをラベルにすると、名前が似ていても区別がしやすくなります。箱や文字の色、医薬品名のフォントなどにそれぞれ特徴があるため、取り違えをしても気が付きやすくなるのです。

調剤薬局内の限られた空間を上手に使う収納術

取り扱う医薬品の種類や量が増えたことにより医薬品が調剤棚に収まりきらなくなっていても、薬局の空きスペースには限りがあります。予算の都合などもあり、おいそれと大きな棚を新しく設置したり、買い替えたりといったことができないことも往々にしてあるでしょう。
そのような場合は、調剤棚や調剤室内のデッドスペースを有効活用できないか考えてみてはいかがでしょうか。

湿布薬などは立てて置く

湿布薬やチューブ入りの外用剤などは、横に寝かせずに立てて収納すると棚の中のスペースを有効活用できます。取り出しやすさもアップし、下敷きになったチューブが潰れて形が変わってしまうことを防げるのもメリットです。視認性も高くなるため、棚卸しなどの在庫管理も楽になります。
湿布薬などが倒れるのを防ぐためには、ブックエンドやファイルボックスなどを使うと良いでしょう。

棚やカウンターの上にミニラックを設置する

立てて置く収納方法からも分かるように、「縦」のスペースはデッドスペースになりやすいもの。棚やカウンターの上にも空きスペースがあるものの、活用できていないというパターンもあるのではないでしょうか。
このような場合は、棚やカウンターの上にも簡易的なラックを設置してみましょう。2段タイプのミニラックを置くだけでも、収納力は2倍になります。

すき間ラックを活用する

調剤棚とカウンターの間などに中途半端なすき間が空いている場合は、すき間ラックの設置がおすすめです。
すき間ラックは細いものなら幅20cm程度のものがあるので、ちょっとしたすき間にも設置が可能です。取り出しにくそうだと感じる場合には、キャスター付きですき間から移動可能なものを選ぶか、収納ボックスを併用すると良いでしょう。高さ調節も可能なので、医薬品の大きさに合わせて棚の位置を変更できます。

調剤棚・調剤室以外の場所も整理整頓・清潔を保つことが必要

整理整頓が必要なのは、調剤棚や調剤室だけではありません。調剤室以外の場所にも十分に気を配る必要があります。
ここでは、調剤薬局の待合室などの整理整頓や清潔保持ができていないとどのようなことにつながるのか、その影響と対策について考えていきましょう。

待合室の整理整頓ができていないと患者さまに不安を与える

処方箋の受付を済ませた患者さまが薬剤のお渡しまでの時間を過ごす待合室。処方箋の内容によっては長い時間を過ごしていただく場所だからこそ、待合室の整理整頓ができていないことで、患者さまを不安な気持ちにさせてしまう可能性があります。

まず、待合室が雑然としていると、調剤室も整理整頓がされていないのではないかと疑念を抱かれることが考えられます。実際には調剤室は整理整頓されたきれいな状態だったとしても、不信感を持たれてしまうかもしれません。

また、人間の心理として整理整頓されていない空間にいると、なんとなく気持ちが落ち着かなくなります。それが居心地の悪さにつながり他の調剤薬局へ流れ、顧客離れにつながる恐れもあります。
市販薬の販売も行っている調剤薬局の場合、陳列棚の整理整頓がされておらず商品が探しにくい状態になっていると、売り上げにも影響が出ることも考えられます。

患者さまに安心して落ち着いた気持ちで調剤を待っていただくためにも、待合室や薬局の出入り口付近なども常に清潔な状態を保つよう、しっかりと整理整頓や清掃を行いましょう。

調剤薬局内の清潔が保たれていないと感染症の拡大につながる

調剤薬局に来局する方の中には、感染症に罹っている患者さまもいらっしゃいます。また、病気に罹り抵抗力が低下している患者さまも多いため、一般的なお店や公共施設以上に感染症対策が必要です。
調剤薬局での感染症の拡大を防ぐためには、空気清浄機などを導入して空気感染を防ぐほか、ウイルスの媒介になり得るホコリが溜まらないようしっかりと清掃を行うことなどが有効です。

また、飛沫感染を防ぐためには薬局内の什器や家具などの除菌・抗菌も大切です。調剤薬局内の収納棚についても抗菌性を重視したい場合は、錫(すず)メッキを施したスチールラックがおすすめです。
錫は古来より抗菌性の高い金属として重用されていて、神様へのご進物にも用いられてきました。サビにも強い素材なので、見た目の清潔感も保持できます。ホコリが溜まりにくい構造になっているのも、公衆衛生の観点から見たプラスポイントのひとつです。

おわりに

今回は、調剤薬局の整理整頓と収納について考えてみました。
調剤棚の整理整頓ができていないと、調剤過誤の発生や調剤時間の長時間化などで患者さまにご迷惑をお掛けしてしまうこともあります。また、待ち時間の長さや雑然とした待合室について不満を持たれ、顧客離れが起きる可能性も考えられます。

ジェネリック医薬品の推進や高齢化社会、人材不足などを背景に、今後も多忙化が進むと考えられる調剤薬局では、さらなる業務効率化が求められていくことでしょう。調剤補助員の配置などももちろん必要ですが、調剤棚にラベルを貼付して調剤過誤を減らしたり、スペースを有効活用して分かりやすく取り出しやすい収納方法を実践したりといった工夫も必要です。
できることから一つずつ、調剤室の整理整頓や収納方法の変更を始めてみませんか。

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